大判例

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東京高等裁判所 昭和53年(う)2709号 判決

被告人 長嶋正巳 外一名

〔抄 録〕

原判決挙示引用の押収物件である本件各写真誌及び組写真を検討すると、被告人らが本件において販売・所持したとされる本件各写真誌は、いずれも全裸又は下半身裸体の女性に対し、その前方又は後方から浣腸を行い、又は行っているが如き場面を撮影した写真を収録掲載したものであり、同じく本件各組写真は右の写真を適宜組み合わせ、八枚一組又は四枚一組にしてビニール袋に入れセツトとして組成されたものであって、とりわけ前方からのものは、全裸又は下半身裸体の女性が仰臥し、その股間を正面に向けて大きく開き、浣腸器もしくはこれに見立てた注射筒を男性(又は女性)の手で女性の性器もしくはその周辺(とくに下方)に挿入又は接触させ、ことさら刺激的なポーズをとらせたうえ、その股間部を撮影したもので、いずれも性器、性毛の部分が女性みずからの手で覆われ、又は四角、円などの黒印によって写真技術上隠ぺいされてはいるものの、その範囲は最小限度該部分のみに限られていることもあって不自然さは免れず、明らかに性器及びその周辺にレンズの焦点をあてて鮮明かつ大写してこれを強調しており、浣腸器の存在もその状態及び方向により見る者をして女性性器に意識を集中させるのに役立っていて、これらが女性のポーズや全体的構成と相まって露骨かつ強度に性的好奇心を挑発させる効果を生ぜしめていること、そして本件各写真誌はこのような写真を随所に掲載し、また本件各組写真は右のような写真を含んでセツトとなったものであり、客観的にみて、全体として低俗かつ卑わいな好色的興味に主として訴えるものであると認められることについては、原判決がその理由中「本件図面の『わいせつ』性について」の(二)項において詳細に認定説示するとおりであって、本件各写真誌及び組写真の中には、浣腸器が明らかに肛門に向けられているものとみられるものや、性器内に挿入されることなく、せいぜい接触しているにとどまるもの、性器、性毛の部分が女性自らの手だけで隠されていて、四角や円などの黒印で写真技術上隠ぺいされていないもの、性器よりもむしろ肛門の部分を大写したものとみられる写真も存することは所論指摘のとおりであるけれども、原判決が本件各写真誌及び組写真の形状、内容等、とくに写真自体のレンズの焦点、女性のポーズ、全体的構成について説示するところはおおむね相当であって、所論のような基本的な見方の誤りはなく、右のような内容を持つ本件各写真誌及び組写真は、それぞれ、全体として、いたずらに性欲を興奮又は刺激せしめ、普通人の性的しゅう恥心を害し、善良な性的道義観念に反するものであると評価することができるから、刑法一七五条の「わいせつ」の図面にあたることは明らかである。弁護人らが原審及び当審において提出した証拠物の中には、写真自体のレンズの焦点、女体のポーズ、全体的構成等の点において本件各写真誌及び組写真と同種同様であり、したがって性的刺激の程度においても同程度あるいはそれ以上と評価できる写真誌、雑誌類も少なからず存し、これに被告人らの原審及び当審公判廷における各供述等を併せて検討すると、かかる写真誌、雑誌類がこう間かなり流布されているものとうかがわれることは所論指摘のとおりであるけれども、かかる写真誌等がすべて現代の社会通念上「わいせつ」性を否定されているものとは速断できず、ましてこれが法的に確定しているわけではないから、所論指摘の右事実等をもってしても、直ちに本件各写真誌及び組写真の「わいせつ」性を否定することはできない。

(新関 金子 小林)

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